診察室で毎年夏になると繰り返される質問の筆頭が「先生、手足口病ですがいつからプールに入っても大丈夫ですか」というものです。小児科医としての私の回答は、常に「本人の全身状態」と「他者への感染力」という二つの軸で構成されています。まず全身状態については、三つのチェック項目を設けています。一つ目は、解熱後二十四時間以上が経過していること。二つ目は、口内炎の痛みが消失し、水分と食事が十分に摂取できていること。三つ目は、通常の遊びができるほどの活気があることです。手足口病による脱水は初期に多いですが、回復期においてもプールの激しい運動によって水分不足が再燃する恐れがあるため、この確認は不可欠です。次に他者への感染力についてですが、手足口病は飛沫感染、接触感染、そして糞口感染という三つの経路を持ちます。プールの水そのものでの感染よりも、更衣室での接触やタオルの貸し借りが問題になります。そのため、皮膚の水疱が完全に乾燥し、ジュクジュクした液体が出ない状態になっていることを確認した上で、プール許可を出します。よく保護者の方から「便からウイルスが出るなら、一ヶ月はプールを休まなければならないのですか」と聞かれますが、それは現実的ではありません。オムツが外れている子供であれば、排便後の手洗いを徹底することを条件に、発疹が落ち着いた段階で許可を出します。ただし、オムツを使用している乳幼児のビニールプールなどでは、ウイルス濃度が高くなりやすいため、より慎重な判断を求めます。また、手足口病のウイルスは数種類あるため、一度かかっても別の型に感染して一夏に二回発症することもあります。プール再開直後にまた熱が出たというケースも珍しくないため、免疫力が回復するまでは、まずは短時間の入水から始めるようアドバイスしています。手足口病を単なる「うつる病気」として忌避するのではなく、正しい知識を持って適切に活動を制限し、そして再開させることが、子供たちの健やかな発育を支える医療の役割だと考えています。
小児科医が解説する手足口病後のプール許可を出す判断材料