日本の医療体制は、世界でも稀に見るアクセスの良さを誇りますが、その恩恵を最大限に享受するためには、患者側にも病院と診療所の使い分けに関する一定のノウハウが求められます。効率的に医療を受けるための第一の鉄則は、自分自身の「かかりつけ医」として特定の診療所を決めておくことです。診療所は個人の医師が運営していることが多く、特定の疾患だけでなく、体全体の不調を総合的に診てくれるのが特徴です。例えば、軽度の発熱や腹痛、慢性的な腰痛、あるいは禁煙相談や予防接種といった日常的なニーズには、診療所が最適です。診療所で診てもらうメリットは、待ち時間が予測しやすいこと、医師とのコミュニケーションが密に取れること、そして紹介状の発行がスムーズなことです。一方で、病院、特に大学病院や地域医療支援病院といった大規模な施設は、入院を伴う治療や手術、特殊な専門外来を主目的として利用すべき場所です。もし、診療所での治療を数週間続けても改善が見られない場合や、癌や心疾患などの重大な疑いがある場合には、迷わず診療所の医師に相談し、適切な専門科を持つ病院への紹介を依頼してください。この「紹介状(診療情報提供書)」の存在が、効率化の鍵となります。紹介状があることで、大病院側はこれまでの検査結果を無駄に繰り返す必要がなくなり、初診時の特別料金も免除されます。また、病院での急性期治療が終わり、状態が安定した後は、再び地域の診療所へ戻ってフォローアップを受ける「逆紹介」というシステムもあります。これは病院のベッドを真に必要とする重症者のために空け、日常的な管理は住み慣れた地域の診療所で行うという、合理的な循環です。ノウハウの二つ目は、受診する時間帯と予約システムの活用です。診療所は最近、インターネット予約を導入しているところが多く、自分の順番が近づいてから家を出ることも可能です。病院の場合は予約をしていても検査などで時間がかかりがちですが、午前中の早い時間帯や週の中日は比較的混雑が緩和される傾向にあります。三つ目は、お薬手帳の管理です。病院と診療所の両方にかかる場合、薬の重複や飲み合わせを防止するために、一冊の手帳にすべての情報を集約し、どちらの受付でも必ず提示するようにしましょう。最後に、救急時の判断です。深夜の突発的な高熱や軽微な怪我なら、まずは夜間休日急病診療所(診療所扱い)へ、生命の危険を感じるほどなら迷わず救急病院(病院扱い)へ向かうという意識付けが、自分自身の命と地域の医療体制を救います。病院と診療所は対立するものではなく、補完し合う関係です。それぞれの得意分野を理解し、自分の症状に合わせて適切に選択する力を持つことが、現代社会を賢く生き抜くための必須スキルと言えるでしょう。
効率的に医療を受けるための賢い使い分けのノウハウ