それは平穏な月曜日の朝のことでした。いつもなら元気に飛び起きてくる幼稚園児の娘が、その日は布団の中で「首が痛くて起きられない」と涙を流していました。見ると、首を右側に少し傾けたまま固まっており、左へ向けようとすると激しく痛がります。昨日の夜までは何事もなく元気に遊んでいただけに、私はパニックに近い衝撃を受けました。熱を測っても三十六度五分、いたって平熱です。どこかでぶつけた記憶もなく、いわゆる「寝違え」だろうかと考えましたが、あまりの痛がり方にただ事ではないと感じました。そこで直面したのが、何科に行けば良いのかという問題です。近所のママ友に相談したところ「子供の骨のことは整形外科よ」と言われましたが、一方で「子供の不調はまず小児科」という言葉も頭をよぎりました。結局、私は娘を抱きかかえるようにして、まずはかかりつけの小児科へと向かいました。結果として、この判断がその後の安心に繋がりました。小児科の先生は娘の喉をライトで照らし、「数日前に鼻水が出ていませんでしたか?」と尋ねました。確かに、三日ほど前に少し鼻をすすっていましたが、すぐに治ったため忘れていたのです。先生は「環軸椎亜脱臼といって、喉の炎症が首の関節の靭帯を緩ませてしまい、少しの動きで首がずれてしまった可能性があります」と丁寧に説明してくれました。これは子供には比較的よくあることで、熱がなくても首の痛みだけが強く出ることがあるそうです。その後、小児科からの紹介状を持って整形外科を訪れ、専門的なカラー(首の固定具)を処方してもらうことになりました。この体験を通して私が学んだのは、子供の体は未発達であり、大人では考えられないようなルートで不調が起こるということです。もし私が自分の判断だけで「寝違えだろう」と家で湿布を貼って数日間様子を見ていたら、娘の関節のずれは固定され、治癒が長引いていたかもしれません。また、整形外科へ直接行っていたとしても、喉の炎症との関連性までスムーズに診断がついたかは分かりません。まずは全身の状態を把握してくれる小児科を受診し、そこから専門の科へバトンを繋いでもらうという流れが、いかに合理的で安心できるかを身を以て痛感しました。子供が熱もないのに首の激痛を訴えたとき、親ができる最も大切なことは、自己診断を捨てて速やかにプロの目を通すことです。一見関係なさそうな過去の小さな鼻風邪さえも、医師にとっては重要な診断の手がかりになります。現在、娘の首はすっかり元通りになりましたが、あの朝の冷や汗をかくような思いは、私の健康管理の教訓として深く刻まれています。