数年前、私がこれまでに経験したことのないような激しい腹痛と発熱に見舞われた際、最初に向かったのは市内で最も有名な総合病院でした。大きな建物に入れば、どんな不調もすぐに解決してもらえるという根拠のない安心感を抱いていたからです。しかし、そこで待っていたのは、三時間を超える長い待ち時間と、事務的な手続きの煩雑さ、そして何よりも自分のような「重症ではないかもしれない患者」が押し寄せていることに対する罪悪感に近い感情でした。診察の結果は急性胃腸炎で、点滴を受けて帰宅することになりましたが、その際に担当の先生から「これくらいの症状なら、まずは近所のクリニックで見てもらったほうが、あなた自身の負担も少ないですよ」と優しく諭されました。この経験を機に、私は病院と診療所の使い分けを真剣に考えるようになりました。診療所の最大の魅力は、なんといってもその距離感の近さにあります。私が後に見つけたかかりつけの診療所は、先生が私の家族構成や以前の病歴、さらには仕事の忙しさまで把握してくれており、不調の際に電話一本で予約ができ、診察室に入れば「その後、血圧の調子はどうですか」といった一歩踏み込んだ会話から始まります。大病院のような最新の検査機器はなくても、先生の確かな触診と問診によって、今の状態が診療所で解決できるものか、あるいは即座に病院へ転送すべきものかを瞬時に判断してくれます。このゲートキーパーとしての役割こそが、地域医療における診療所の真髄なのだと気づかされました。また、費用面でも診療所は通いやすく設定されており、無駄な再診料や大病院特有の選定療養費を気にする必要がありません。何よりも、体調が悪い時に移動距離が短く、顔なじみのスタッフが迎えてくれる安心感は、精神的な回復を早める大きな要因となります。もちろん、精密な検査や手術が必要になれば、先生が信頼できる大病院へ紹介状を書いてくれます。その際には、私のこれまでの経過が凝縮された紹介状という「パスポート」があるおかげで、病院での診察もスムーズに進むのです。以前の私は「大きければ大きいほど良い」という盲目的な病院信仰を持っていましたが、今は「まずは身近な診療所、必要なら専門の病院」という明確なルールを自分の中に持っています。この使い分けができるようになってから、医療機関に対する不安や不満が劇的に減り、自分の健康を管理する主体性が生まれたように感じます。自分の体の声を最もよく理解してくれるパートナーとしての診療所と、いざという時の砦としての病院。この両者の違いを理解し、尊重することが、自分自身の生活の質を向上させるための最も基本的な知恵であると確信しています。
初めての体調不良で迷った病院選びと診療所の利点