おでこに残るクレーターが私のコンプレックス
物心ついた時から、私のおでこの真ん中には小さなクレーターがありました。それは、私がまだ言葉もろくに話せない幼児期にかかった、水疱瘡が残した忘れ形見です。母は「あの時、痒がるあなたを止められなかった。ごめんね」と何度も謝りましたが、私自身にその頃の記憶は全くありません。しかし、その跡は私の成長と共に、常にコンプレックスの中心にあり続けました。小学校のクラスメイトに「おでこに穴が開いてる」とからかわれた日、私は家に帰って泣きながら鏡の前でおでこを擦りました。もちろん、跡が消えるはずもありません。中学生になると、前髪で隠すことが私の絶対的なルールになりました。どんなに流行のヘアスタイルが素敵に見えても、おでこを出すという選択肢は私には存在しませんでした。風が吹く日は一日中落ち着かず、体育の授業やプールは憂鬱で仕方ありませんでした。友人たちと顔を近づけて写真を撮る時も、無意識に少し後ろに下がってしまう。この小さな凹みが、私の自己肯定感を静かに、しかし確実に削り取っていきました。大人になり、メイクという武器を手に入れましたが、ファンデーションやコンシーラーを重ねても、クレーターの影は完全には消えません。美容皮膚科でレーザー治療という選択肢があることも知りましたが、費用やダウンタイムを考えると、なかなか一歩を踏み出せずにいます。たった数ミリの跡、他人から見れば気にもならないようなものかもしれません。しかし、私にとっては鏡を見るたびに目に飛び込んでくる、消せない過去の証なのです。今でもふとした瞬間、もしあの時、水疱瘡の跡が残らなかったら、もう少しだけ自分に自信が持てる人生だったのではないか、と考えてしまうことがあります。