社会人になって数年が経った頃、私の体は静かに悲鳴を上げ始めました。最初は、朝起きられないほどの倦怠感。次に、満員電車に乗ると息が苦しくなり、心臓がバクバクと音を立てるようになりました。当時は仕事のプレッシャーのせいだと軽く考え、栄養ドリンクを飲んで自分を奮い立たせる日々。しかし、症状は悪化の一途をたどり、ついには会議中にめまいで倒れそうになる事態にまで発展しました。同僚に心配され、まずは心臓に問題があるのではと循環器内科の門を叩きました。心電図、心エコー、血液検査と、あらゆる検査を受けましたが、医師から返ってきた言葉は「心臓に全く異常はありませんね」というものでした。健康であると証明されたはずなのに、私の心は晴れませんでした。原因が分からないという事実は、得体の知れない怪物に追いかけられているような恐怖でした。途方に暮れる私を見かねて、その医師は「もしかしたら、自律神経が関係しているかもしれません。一度、心療内科で相談してみてはいかがですか」と優しく助言してくれました。正直なところ、心療内科と聞くと精神的な弱さのレッテルを貼られるような気がして、強い抵抗感がありました。しかし、このまま症状を抱えて生活することは不可能だと感じ、震える手で紹介されたクリニックに電話をかけたのです。初診の日、私は緊張しながらこれまでの経緯を話しました。先生は私の話を遮ることなく、静かに耳を傾け、仕事の状況や生活リズムについて丁寧に質問してくれました。そして「それはつらかったですね。あなたの体は、これ以上無理だよとサインを出しているんです」と言われ、涙が溢れました。自律神経失調症という診断を受け、生活指導と漢方薬による治療が始まりました。あの時、勇気を出して一歩を踏み出したことが、私の人生の転機になったと今でも確信しています。
どの病院に行けば良いか分からなかった私の体験