突然、世界がぐるぐると回り出すような回転性のめまい。あるいは、常にキーンという高い音が耳から離れない耳鳴り。これらの症状は非常に不快で、日常生活に大きな支障をきたします。そして、これらは自律神経の乱れが原因で起こる代表的な症状としてもよく知られています。しかし、安易に「ストレスのせいだ」と自己判断してしまう前に、まず訪れるべき診療科があります。それが耳鼻咽喉科です。なぜなら、めまいや耳鳴りの原因が、耳の奥にある平衡感覚を司る「三半規管」や音を感じ取る「蝸牛」といった器官の異常にある可能性が高いからです。例えば、良性発作性頭位めまい症(BPPV)は、耳石という炭酸カルシウムの粒が三半規管に入り込むことで起こる、最も頻度の高いめまいです。これは特定の頭の位置で誘発される特徴があり、多くは理学療法で改善します。また、メニエール病は、内耳の内リンパ水腫が原因で、激しいめまいと難聴、耳鳴りを繰り返す病気です。これらの病気は、耳鼻咽喉科の専門的な検査によってはじめて正確な診断が可能になります。もし、これらの検査で耳に明らかな異常が見つからなかった場合、そこではじめて自律神経の不調や、首や肩の凝りによる血行不良、あるいは脳の問題などが原因として考えられるのです。耳鼻咽喉科で器質的な疾患がないことを確認することは、その後の治療方針を決める上で極めて重要です。原因が分からないまま心療内科などで治療を始めても、根本的な問題が耳にあれば症状は改善しません。まずは症状が起きている場所に最も近い専門家を訪ねるという原則に立ち返り、めまいや耳鳴りに悩んだら、耳鼻咽喉科の扉を叩くことから始めてみてください。それが遠回りのようで、実は最も確実な回復への一歩となるのです。