大人の水疱瘡はなぜ跡が残りやすいのか
「大人がかかると重症化する」と言われる病気はいくつかありますが、水疱瘡はその代表格です。子どもの頃にかかるよりも遥かに高熱が続き、発疹の数も多く、肺炎や脳炎といった深刻な合併症を引き起こすリスクも高まります。そして、治癒した後も、子どもの頃にかかった場合と比較して、跡が残りやすいという非常に厄介な特徴があります。なぜ大人の水疱瘡は、より深刻な跡を残してしまうのでしょうか。その理由は、体の免疫反応と皮膚の再生能力の違いにあります。大人の体は、子どもに比べて免疫システムが完成しているため、水痘・帯状疱疹ウイルスに対してより強力な免疫反応を示します。この過剰とも言える強い炎症反応が、皮膚のより深い部分である真皮層にまでダメージを与えてしまうのです。皮膚の表面である表皮のダメージであれば、ターンオーバーによって綺麗に再生されますが、真皮層まで破壊されてしまうと、コラーゲン線IFNが失われ、凹んだ瘢痕、いわゆるクレーターとなって残ってしまいます。さらに、年齢と共に皮膚の再生能力やターンオーバーの速度そのものが低下していることも、跡が残りやすくなる一因です。新しい皮膚が作られるスピードが遅いため、炎症によって生じた色素沈着がなかなか排出されず、長期間にわたって茶色いシミとして居座り続けます。また、大人は仕事や社会生活のストレス、睡眠不足など、免疫力を低下させる要因を抱えていることも多く、それらが治癒を遅らせ、結果的に跡が残りやすい状況を作り出してしまいます。水疱瘡はワクチンで予防できる病気です。特に、過去にかかった記憶がない、あるいは抗体価が低い成人は、自らを守るため、そして辛い跡を残さないために、ワクチン接種を検討することが賢明な選択と言えるでしょう。