まぶたにしこりができる霰粒腫。痛みが少ないため、病院に行く前にまずは自分で何かできないかと考える方も多いでしょう。セルフケアとしてよく話題に上るのが、「温める」のと「冷やす」のどちらが良いのかという問題です。これは、霰粒腫の状態によって適切な対処が異なるため、正しく理解しておく必要があります。まず、基本的な考え方として、痛みがなく、赤みも腫れも強くない、慢性的な状態の「霰粒腫」に対しては、「温める(温罨法)」が有効です。霰粒腫は、マイボーム腺という脂腺に、固まった油分が詰まることで生じます。この詰まった油分は、バターが温めると溶けるように、熱を加えることで融解し、排出されやすくなります。具体的な方法としては、蒸しタオルや、市販の温熱アイマスクなどを使い、1回5分程度、まぶたの上から優しく温めます。お風呂に浸かりながら、清潔な指の腹でまぶたの縁を優しくマッサージするのも、血行を促進し、詰まりを解消するのに効果的です。この温めるケアは、血行を良くし、マイボーム腺の機能を正常化させることで、新たな霰粒腫の予防にも繋がります。一方、「冷やす(冷罨法)」べきなのは、霰粒腫に細菌感染が合併し、急性の炎症を起こした「化膿性霰粒腫」の場合です。この状態になると、それまで痛くなかったしこりが、急に赤く腫れ上がり、ズキズキとした強い痛みを伴います。これは、麦粒腫と同じような状態であり、炎症が活発に起きているサインです。このような時に温めてしまうと、血行が促進されることで、かえって炎症や腫れを助長してしまう可能性があります。したがって、急性の強い痛みや赤みがある場合は、清潔なガーゼなどで保冷剤を包み、軽くまぶたに当てるなどして冷やし、炎症を鎮める方が適切です。ただし、このセルフケアはあくまで応急処置です。化膿性霰粒腫は、抗菌薬による治療が必要となるため、速やかに眼科を受診しなければなりません。まとめると、「痛みがなく、慢性的で、しこりだけがある霰粒腫」には「温める」。「急に赤く腫れて、ズキズキと痛む化膿性霰粒腫」には「冷やす」。この原則を覚えておきましょう。ただし、自己判断に自信がない場合や、症状が改善しない場合は、必ず専門医の指示を仰ぐことが最も安全です。
霰粒腫のセルフケア、温めるべきか冷やすべきか