指の関節の痛みで、まさか「婦人科」を受診するとは、少し前までは考えられないことでした。しかし、更年期の指の痛みの原因が、女性ホルモンであるエストロゲンの減少にあることが明らかになるにつれて、婦人科での治療が、このつらい症状に対する非常に有効な選択肢として、注目を集めています。整形外科で「ヘバーデン結節」や「ブシャール結節」と診断され、痛み止めや湿布で様子を見るしかない、と言われた方でも、婦人科的なアプローチで症状が劇的に改善するケースがあるのです。婦人科で行われる治療の中心となるのが、「ホルモン補充療法(HRT)」です。これは、減少してしまったエストロゲンを、飲み薬や貼り薬、塗り薬などで少量補充することで、ホルモンバランスの乱れによって引き起こされる様々な不調を和らげる治療法です。のぼせやほてりといった典型的な更年期症状だけでなく、関節を保護する作用のあるエストロゲンを補うことで、指の関節の痛みやこわばりの緩和にも、高い効果が期待できます。また、ホルモン補充療法に抵抗がある方や、血栓症のリスクなどで使用できない方には、「漢方薬」も有効な選択肢となります。当帰芍薬散や桂枝茯苓丸など、血行を改善し、体のバランスを整える漢方薬が、指の痛みに効果を示すことがあります。そして、近年、特に注目されているのが「エクオール」という成分です。これは、大豆イソフラボンが、特定の腸内細菌によって変換されることで作られる物質で、エストロゲンと非常によく似た構造と働きを持っています。しかし、このエクオールを体内で作れる日本人は、約半数と言われています。自分がエクオールを作れる体質かどうかは、簡単な尿検査で調べることができます。もし作れない体質であれば、サプリメントで直接エクオールを摂取することが、指の痛みのセルフケアとして期待されています。指が痛いのに婦人科へ、というのは、まだ少し勇気がいるかもしれません。しかし、それは、更年期という大きな変化に直面している女性の体を、トータルでサポートしてくれる、心強い選択肢なのです。
指の痛みで婦人科という選択肢