子どもの頃、多くの人が経験する水疱瘡。熱と全身の発疹というつらい症状が治まった後、安堵したのも束の間、鏡を見てがっかりした経験を持つ人も少なくないでしょう。それは、肌に残ってしまった水疱瘡の跡です。同じように水疱瘡にかかったのに、跡が全く残らず綺麗な肌に戻る子もいれば、何年も、あるいは生涯にわたって消えない跡が残ってしまう子もいます。この違いは一体どこから生まれるのでしょうか。最も大きな分岐点は、水ぶくれ(水疱)ができた後のケアにあります。水疱瘡の跡が残る主な原因は二つあります。一つは、強い痒みによって皮膚を掻き壊し、細菌による二次感染を起こしてしまうこと。これにより炎症が長引き、皮膚の深い部分までダメージが及ぶことで、茶色いシミのような炎症後色素沈着や、クレーターのような凹んだ瘢痕が形成されます。もう一つは、水疱が真皮層にまで達するほど深かった場合です。特に大人が罹患した場合や、アトピー性皮膚炎などで皮膚のバリア機能が低下している場合は、炎症が重症化しやすく、掻かなくても真皮層が破壊されて跡になりやすい傾向があります。つまり、跡を残さないための最大の秘訣は、いかにして掻かずに炎症を最小限に抑え、皮膚の自然な治癒力を最大限に引き出すかにかかっています。処方された塗り薬を正しく使い、爪を短く切り、肌を清潔に保つ。こうした地道で基本的なケアを徹底できたかどうかが、数年後、数十年後の肌の状態を大きく左右するのです。運命の分かれ道は、病気の最中の丁寧なスキンケアにあると言っても過言ではありません。