物忘れ外来ではどのような検査が行われるのか
「物忘れ外来」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、その名の通り物忘れや認知症を専門的に診断し、治療方針を決定するための特別な窓口です。一般的な診療科と比べて、より深く、多角的なアプローチで認知機能の評価を行うのが特徴です。物忘れ外来での診察は、通常、非常に丁寧な問診から始まります。医師はまず、ご本人から現在の症状や困りごとについて話を聞きますが、それと同じくらい、あるいはそれ以上に重視されるのが、付き添いの家族からの情報です。本人が自覚していない生活上の変化や、以前と比べて変わった点などを具体的に伝えることが、正確な診断の鍵となります。問診の次に行われるのが、神経心理学検査です。これは、臨床心理士などの専門家が、質問や簡単な作業を通して記憶力、注意力、言語能力、判断力といった脳の様々な機能を客観的に評価するテストです。「長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」や「ミニメンタルステート検査(MMSE)」などが有名で、これにより認知機能が年齢相応のレベルにあるのか、どの領域に低下が見られるのかを数値で把握します。さらに、脳そのものの状態を確認するために、CTやMRI、SPECTといった画像検査が行われます。これにより、脳の萎縮の程度や血流の低下、他の脳疾患の有無などを視覚的に確認します。加えて、認知症と似た症状を引き起こす他の病気の可能性を排除するために、血液検査も欠かせません。これらの多岐にわたる検査結果を総合的に分析し、医師は最終的な診断を下します。単に病名を告げるだけでなく、その後の治療や生活上のアドバイス、利用できる介護サービスまで含めてサポートするのが、物忘れ外来の大きな役割なのです。