あれは忘れもしない、蒸し暑い7月の週末でした。前日まで何の予兆もなかったのに、土曜日の朝、目覚めた瞬間から体に異変を感じました。尋常ではない倦怠感と、体の節々がギシギシと痛む感覚。熱を測ると、すでに39.2度。インフルエンザか、あるいはついにコロナにかかってしまったのかと、私の頭の中は一気にパニックになりました。しかし、本当の地獄はそこからでした。熱が上がるにつれて、喉の奥に奇妙な違和感が生まれ始めたのです。最初は少しイガイガする程度だったのが、時間と共にそれは燃えるような灼熱感へと変わり、やがて唾を飲み込むことすら躊躇するほどの激痛へと発展しました。鏡で喉の奥を覗いてみると、のどちんこの周りに、まるでイクラのような赤いプツプツがいくつもできていました。その光景は、まさに恐怖でした。休日だったため、すぐに病院へ行くこともできず、私は市販の解熱鎮痛剤を飲んでひたすら耐えるしかありませんでした。しかし、薬を飲むための水一口ですら、喉をガラスの破片が通過するような痛みで、涙が滲みます。食事など到底無理で、ウィダーインゼリーをなんとか流し込むのが精一杯。夜には熱が40度を超え、悪寒で歯の根が合わないほどガタガタと震え、意識が朦朧としました。喉の痛みはピークに達し、もはや声を発することもできません。あまりの苦しさに、このままどうにかなってしまうのではないかという本気の恐怖に襲われました。月曜日の朝、這うようにして内科を受診し、医師に喉の奥を見せた瞬間、「あー、これは典型的な大人のヘルパンギーナだね。つらかったでしょう」と告げられました。その言葉に、原因が分かった安堵と、これまでの苦しみが報われたような気持ちで、思わず涙がこぼれました。特効薬はなく、ひたすら対症療法で乗り切るしかないという厳しい現実。あの地獄のような初期症状の激しさは、一生忘れることのできないトラウマとして、私の記憶に深く刻み込まれています。
地獄の始まりかと思った私のヘルパンギーナ体験記