まぶたが腫れているのに、ものもらい特有の痛みや赤みがない。こんな経験はありませんか。多くの人が「ものもらい」と一括りにしてしまうまぶたの腫れですが、実はその原因によって大きく二つの種類に分けられます。一つは、細菌感染によって引き起こされる「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」。これが一般的にイメージされる、赤く腫れてズキズキと痛む「ものもらい」です。そしてもう一つが、今回のテーマである「痛くないものもらい」、その正体である可能性が高い「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」です。霰粒腫は、麦粒腫とは発生のメカニズムが全く異なります。まぶたの縁には、マイボーム腺という、涙の蒸発を防ぐための油分を分泌する小さな腺が並んでいます。霰粒腫は、このマイボーム腺の出口が何らかの原因で詰まってしまい、分泌されるべき油分が腺の中に溜まって、しこりのような塊を形成する病気です。これは細菌感染による炎症ではないため、麦粒腫のような急性の強い痛みや、まぶた全体が真っ赤に腫れ上がるような症状は伴いません。初期症状は、まぶたの中に小さなコロコロとしたしこりができる程度で、自覚症状がほとんどないことも少なくありません。しかし、しこりが大きくなってくると、まぶたの腫れぼったさや異物感、ゴロゴロとした違和感を覚えるようになります。さらに大きくなると、しこりが眼球を圧迫して乱視を引き起こしたり、見た目上の問題になったりすることもあります。つまり、「痛くない」からといって、決して放置して良いわけではないのです。霰粒腫は、自然に吸収されて小さくなることもありますが、数ヶ月以上大きさが変わらなかったり、徐々に大きくなったりする場合は、専門的な治療が必要となります。麦粒腫と霰粒腫は、見た目が似ていることもありますが、治療法が異なります。自己判断で市販の抗菌目薬を使い続けても、非感染性である霰粒腫には効果が期待できません。まぶたのしこりに気づき、それが痛くない場合は、霰粒腫を疑い、早めに眼科を受診することが、適切な診断と治療への第一歩となるのです。
痛くないものもらいの正体は霰粒腫かもしれない