家族の物忘れや様子の変化に気づいた時、多くの人は「すぐに専門医のもとへ」と考えがちです。しかし、実はその前にまず身近な「かかりつけ医」に相談することが、結果的にスムーズな診断と治療への近道となるケースが少なくありません。いきなり精神科や物忘れ外来の予約を取ろうとしても、数ヶ月先まで埋まっていることも珍しくありませんし、何よりご本人が「認知症の病院」という言葉に強い抵抗感を抱き、受診そのものを拒否してしまう可能性が高いのです。その点、普段から風邪や高血圧などで通院しているかかりつけ医であれば、ご本人も比較的安心して足を運ぶことができます。「いつもの健康チェックのついでに」という自然な形で、認知機能に関する相談を切り出しやすいのが大きなメリットです。また、かかりつけ医は患者さんの普段の健康状態や性格、生活背景をよく理解しています。そのため、最近の変化が本当に認知症の始まりなのか、あるいは他の身体疾患(例えば甲状腺機能の低下やビタミン欠乏など)や服用している薬の副作用による一時的な意識障害(せん妄)なのかを、総合的な視点から判断する手助けをしてくれます。もし専門的な検査が必要だと判断されれば、症状に合った最適な専門医を紹介してもらい、紹介状を書いてもらうことができます。紹介状があれば、専門医側も患者さんの基本情報を事前に把握できるため、初診から的を絞った診察が可能になります。家族だけで抱え込み、どの専門科へ行くべきかと思い悩む前に、まずは最も信頼できる医療のパートナーであるかかりつけ医の扉を叩いてみてください。そこから、適切な次の一歩が見えてくるはずです。