まぶたにできる腫れやしこり。これらは一般的に「ものもらい」や「めばちこ」と一括りにされがちですが、眼科の世界では、原因も症状も異なる、二つの代表的な病気、「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」と「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」に分けられます。どちらも他人にうつる病気ではありませんが、治療法が異なるため、その違いを理解しておくことは大切です。見分けるための最も大きなポイントは、「痛み」と「赤み」の有無です。まず、「麦粒腫(めばちこ)」は、黄色ブドウ球菌などによる「細菌感染症」です。まぶたの汗腺や脂腺が細菌に感染し、急性の炎症を起こした状態です。そのため、主な症状は、まぶたの「赤み」「腫れ」、そして何より「ズキズキとした痛み」です。初期には、まばたきをすると痛い、ゴロゴロするといった違和感から始まり、次第に赤みと腫れが強くなり、押すと明確な痛みを感じます。数日経つと、炎症の中心に白や黄色の膿の点が見えるようになり、やがて自然に破れて膿が出ると、症状は急速に改善します。これは、いわば「化膿したおでき」がまぶたにできた状態と考えると分かりやすいでしょう。一方、「霰粒腫」は、細菌感染が原因ではない「無菌性の炎症」によって起こります。まぶたの内側にある、涙の油分を分泌する「マイボーム腺」の出口が、何らかの原因で詰まってしまうことが発端です。行き場を失った油分が腺の中に溜まり、その周りに「肉芽腫(にくげしゅ)」という、しこりのような組織が形成されます。これが霰粒腫の正体です。霰粒腫の主な症状は、まぶたの中にできる「痛みや赤みを伴わない、コリコリとしたしこり」です。麦粒腫のような急性の炎症症状はないため、痛みを感じることは少なく、本人も気づかないうちに、鏡を見て初めてしこりの存在に気づく、というケースも珍しくありません。ただし、この霰粒腫に細菌が二次感染を起こすと、「急性霰粒腫」となり、麦粒腫のように赤く腫れて痛むことがあります。この状態になると、見た目だけで両者を区別するのは難しくなります。まとめると、痛くて赤いのが「麦粒腫(めばちこ)」、痛くなくてコリコリしているのが「霰粒腫」と、大まかに覚えておくと良いでしょう。しかし、正確な診断のためには、必ず眼科医の診察が必要です。