我が子の水疱瘡の跡を防いだ母親の奮闘記
娘が保育園から水疱瘡をもらってきたのは、夏の暑い日でした。みるみるうちに全身に広がる赤い発疹と水ぶくれ、そして高熱。何よりも可哀想だったのは、四六時中「かゆい、かゆい」と泣きながら体を掻きむしろうとする娘の姿でした。私自身の顔にも、子どもの頃に掻き壊した水疱瘡の跡がうっすらと残っています。この子にだけは同じ思いをさせたくない。その一心で、私の奮闘が始まりました。まず徹底したのは、爪を極限まで短く切り、角をやすりで丸くすることです。そして、小児科で処方されたカチリ(フェノール・亜鉛華リニメント)と抗ヒスタミン薬の飲み薬を、時間をきっちり守って使用しました。特にカチリは、塗ることで痒みを和らげ、水ぶくれを乾燥させる効果があります。娘が嫌がらないように「魔法のお薬だよ」と声をかけながら、一つ一つの発疹に丁寧に塗布しました。日中は、肌触りの良い綿素材のゆったりとした服を着せ、汗をかいたらすぐにシャワーで流して清潔を保ちました。シャワーの際は、石鹸をよく泡立てて手で優しく洗い、ゴシゴシと擦らないように細心の注意を払いました。一番大変だったのは、眠っている間の無意識の引っ掻きです。夜中に何度も目を覚まし、娘の手が体に向かっていないかチェックし、そっと手を握ってあげました。痒みで眠りが浅い娘のために、部屋を涼しく保ち、アイスノンで体を冷やしてあげることもありました。全ての水ぶくれがかさぶたになり、それが自然に剥がれ落ちるまでの約二週間は、まさに戦争のようでした。しかし、その甲斐あって、娘の肌には一つも跡が残ることはありませんでした。あの時の苦労は、娘のすべすべの肌を見るたびに、母親としての勲章のように、誇らしい記憶として蘇るのです。