医療問題・社会課題に対する解決策を探る

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  • 整形外科で受ける指の関節痛の治療

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    更年期世代の女性を悩ませる、指の第一関節や第二関節の痛み。その症状で整形外科を受診した場合、具体的にどのような診察や治療が行われるのでしょうか。その流れを知っておくことは、病院へ行く前の不安を和らげ、安心して医師に相談するための助けになります。まず、整形外科では、問診と視診、触診が行われます。いつから、どの指の、どの関節が痛むのか。朝のこわばりの有無や、他に痛む関節はないか、といったことを詳しく聞かれます。そして、医師が直接、指の腫れや変形の程度、熱感、押した時の痛みの場所(圧痛点)などを確認します。この時点で、症状がヘバーデン結節やブシャール結節に典型的か、あるいは関節リウマチの可能性がないか、ある程度の見当をつけます。次に、診断を確定させるために「レントゲン(X線)検査」が行われます。レントゲン写真を見ることで、関節の隙間が狭くなっているか、軟骨がすり減っていないか、骨のトゲ(骨棘)ができていないか、といった、変形性関節症に特徴的な変化を確認することができます。これらの診察と検査の結果、ヘバー-デン結節などと診断された場合、治療は主に、痛みを和らげるための「保存療法」が中心となります。まず処方されることが多いのが、消炎鎮痛成分を含む「湿布」や「塗り薬」です。これらで痛みが十分にコントロールできない場合は、「非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)」の内服薬が処方されることもあります。また、痛みが特に強い関節に対しては、炎症を強力に抑える「ステロイド注射」が、非常に高い効果を発揮することがあります。関節内に直接注射することで、数ヶ月間、痛みが劇的に改善する方もいます。さらに、テーピングや、指の動きをサポートする装具(スプリント)を用いた「装具療法」も、痛みの緩和と関節の保護に有効です。これらの保存療法を組み合わせても、痛みが改善せず、日常生活に大きな支障をきたす場合には、最終的な選択肢として、関節を固定する手術などが検討されることもあります。

  • 指の痛みで婦人科という選択肢

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    指の関節の痛みで、まさか「婦人科」を受診するとは、少し前までは考えられないことでした。しかし、更年期の指の痛みの原因が、女性ホルモンであるエストロゲンの減少にあることが明らかになるにつれて、婦人科での治療が、このつらい症状に対する非常に有効な選択肢として、注目を集めています。整形外科で「ヘバーデン結節」や「ブシャール結節」と診断され、痛み止めや湿布で様子を見るしかない、と言われた方でも、婦人科的なアプローチで症状が劇的に改善するケースがあるのです。婦人科で行われる治療の中心となるのが、「ホルモン補充療法(HRT)」です。これは、減少してしまったエストロゲンを、飲み薬や貼り薬、塗り薬などで少量補充することで、ホルモンバランスの乱れによって引き起こされる様々な不調を和らげる治療法です。のぼせやほてりといった典型的な更年期症状だけでなく、関節を保護する作用のあるエストロゲンを補うことで、指の関節の痛みやこわばりの緩和にも、高い効果が期待できます。また、ホルモン補充療法に抵抗がある方や、血栓症のリスクなどで使用できない方には、「漢方薬」も有効な選択肢となります。当帰芍薬散や桂枝茯苓丸など、血行を改善し、体のバランスを整える漢方薬が、指の痛みに効果を示すことがあります。そして、近年、特に注目されているのが「エクオール」という成分です。これは、大豆イソフラボンが、特定の腸内細菌によって変換されることで作られる物質で、エストロゲンと非常によく似た構造と働きを持っています。しかし、このエクオールを体内で作れる日本人は、約半数と言われています。自分がエクオールを作れる体質かどうかは、簡単な尿検査で調べることができます。もし作れない体質であれば、サプリメントで直接エクオールを摂取することが、指の痛みのセルフケアとして期待されています。指が痛いのに婦人科へ、というのは、まだ少し勇気がいるかもしれません。しかし、それは、更年期という大きな変化に直面している女性の体を、トータルでサポートしてくれる、心強い選択肢なのです。

  • 若年性認知症が疑われる場合はどこへ相談か

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    認知症は高齢者の病気というイメージが強いですが、実際には65歳未満の現役世代で発症する「若年性認知症」も存在します。働き盛りであり、家庭や社会で中心的な役割を担っている世代での発症は、ご本人にとっても家族にとっても、高齢者の場合とはまた異なる、深刻で複雑な問題を引き起こします。症状の現れ方にも特徴があり、物忘れよりも、仕事の段取りが悪くなる、計画が立てられないといった「遂行機能障害」や、温厚だった人が怒りっぽくなるなどの「性格変化」が前面に出ることも少なくありません。そのため、本人も周囲も認知症とは気づかず、うつ病や更年期障害、あるいは単なる仕事のストレスとして見過ごされ、診断が遅れがちになるという課題があります。もし、現役世代の方でこのような変化に気づいた場合、相談する窓口としては、まず一般的な認知症と同様に、神経内科や精神科、物忘れ外来が挙げられます。しかし、より専門的なサポートを得るためには、「若年性認知症支援センター」や「若年性認知症コールセンター」といった専門相談窓口の活用が不可欠です。これらの機関は、各都道府県や指定都市に設置されており、専門の相談員が電話や面談で対応してくれます。医療機関の情報提供だけでなく、診断後の就労継続支援、経済的な問題(障害年金や各種手当の申請)、利用できる公的サービス、家族の悩みなど、若年性認知症に特有の幅広い課題について、ワンストップで相談に乗ってくれる心強い存在です。診断が難しいからこそ、そしてその後の人生への影響が大きいからこそ、少しでも疑いを感じたら、一人で悩まずに、こうした専門機関にアクセスすることが、未来への第一歩となります。

  • 過敏性腸症候群と診断されたある女性の物語

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    山本さん(仮名・28歳)は、学生時代から大切な試験や面接の前になると、決まって激しい腹痛と下痢に襲われるという悩みを抱えていました。社会人になってもその症状は続き、特に重要なプレゼンの前日は、ほとんど眠れないほどの不安と腹痛で苦しみました。彼女の生活は、常にトイレの場所を気にするという制約の中にありました。友人との旅行や外食も心から楽しめず、次第に人と会うこと自体が億劫になっていきました。このままではいけないと決心した彼女は、まず症状から考えて消化器内科を受診しました。医師は彼女の話を丁寧に聞いた後、他の深刻な病気の可能性を排除するために大腸内視鏡検査を勧めました。検査の結果、腸にポリープや炎症といった器質的な異常は一切見つかりませんでした。医師は「検査で異常がないことから、過敏性腸症候群(IBS)で間違いないでしょう」と告げました。この病気は、ストレスなどが引き金となって自律神経が乱れ、腸が過敏に反応してしまう機能的な疾患であると説明を受けました。原因がはっきりしたことに安堵する一方で、目に見える異常がないのにこれほど苦しいという現実に、山本さんは複雑な気持ちになりました。治療は、腸の動きを整える薬の処方から始まりましたが、それだけでは十分な効果は得られませんでした。そこで医師は、食事療法(低FODMAP食)と並行して、心療内科でのカウンセリングを勧めました。最初は半信半疑だった山本さんですが、カウンセリングで自身の完璧主義な性格やストレスへの対処法について見つめ直すうちに、少しずつ心に変化が生まれました。腹痛が起きても「またか」と冷静に受け流せるようになり、不安の連鎖を断ち切る術を学んだのです。今では症状が完全になくなったわけではありませんが、上手に付き合えるようになり、以前よりもずっと自由に外出を楽しめるようになりました。

  • 鍼灸やツボ押しで胃の不調を整える東洋医学の叡智

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    西洋医学が胃痛に対して胃酸抑制剤や消化剤といった薬で直接的にアプローチするのに対し、東洋医学では、よりホリスティックな視点から不調の原因を探り、体全体のバランスを整えることで根本的な改善を目指します。夏バテによる胃痛や食欲不振は、東洋医学において非常に得意とする分野の一つです。東洋医学の考えでは、夏の気候の特徴である「暑邪(しょじゃ)」と「湿邪(しつじゃ)」が体内に侵入し、飲食物の消化吸収を司る「脾(ひ)」の機能を低下させることが、夏バテの主な原因とされています。特に、湿度の高い日本の夏は、この「湿邪」の影響を受けやすく、体内に余分な水分が溜まることで、胃が重く、体がだるく感じられるのです。鍼灸治療では、まず丁寧な問診や脈診、舌診によって、その人の体質や不調の根本原因を見極めます。そして、弱った「脾」の働きを助け、体内の余分な「湿」を取り除く効果のある経穴(ツボ)に、髪の毛ほどの細さの鍼や、温かいお灸で刺激を与えます。これにより、滞っていた「気」と「血」の流れがスムーズになり、自律神経のバランスが整えられ、胃腸が本来の元気を取り戻していくのです。自宅でできるセルフケアとしては、ツボ押しが手軽で効果的です。胃腸の万能ツボとして知られる「足三里(あしさんり)」は、膝のお皿のすぐ下、外側のくぼみから指4本分下にあります。親指で5秒ほどゆっくり圧をかけ、ゆっくり離すのを繰り返します。また、みぞおちとおへその中間にある「中脘(ちゅうかん)」というツボを、手のひらで優しく円を描くようにマッサージするのも、胃の働きを高めるのに役立ちます。薬だけに頼らず、数千年の歴史を持つ東洋の知恵を取り入れることで、より穏やかで根本的な体質改善へと繋がるでしょう。

  • 市販の胃薬に手を出す前に知るべき正しい知識

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    突然のキリキリとした胃痛や、どんよりとした胃もたれ。そんな時、ドラッグストアで手軽に購入できる市販の胃薬は、まるで救世主のように思えるかもしれません。しかし、夏バテによる胃痛の場合、その原因を正しく理解せずに薬を選んでしまうと、症状を緩和するどころか、かえって悪化させてしまう危険性すらあります。市販薬に頼る前に、まずは自分の胃がどのような状態にあるのかを見極めることが肝心です。夏バテの胃痛は、大きく二つのタイプに分けられます。一つは、ストレスや不規則な生活で自律神経が乱れ、胃酸が過剰に分泌される「攻撃型」の胃痛です。この場合は、胃酸の分泌を抑える「H2ブロッカー」や、出過ぎた胃酸を中和する「制酸薬」が有効です。症状としては、キリキリ、シクシクとした痛みや胸焼けが特徴です。もう一つは、冷たいものの摂りすぎや食欲不振によって胃の働きそのものが低下している「機能低下・停滞型」の不調です。この場合は、消化を助ける「消化酵素薬」や、弱った胃の運動を促す「健胃生薬」が配合された胃薬が適しています。胃が重い、もたれる、食欲がないといった症状がこれにあたります。もし、機能が低下している胃に、強力な胃酸抑制薬を使ってしまうと、ただでさえ弱い消化力がさらに低下し、消化不良を助長しかねません。自分の症状がどちらのタイプに近いのかを冷静に判断し、薬剤師に相談の上で購入することが重要です。そして何よりも忘れてはならないのは、市販薬はあくまで一時的な症状緩和のための対症療法であるということです。2~3日服用しても改善が見られない、あるいは悪化するようなら、迷わず消化器内科を受診し、専門医の診断を仰ぐべきです。

  • 物忘れ外来ではどのような検査が行われるのか

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    「物忘れ外来」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、その名の通り物忘れや認知症を専門的に診断し、治療方針を決定するための特別な窓口です。一般的な診療科と比べて、より深く、多角的なアプローチで認知機能の評価を行うのが特徴です。物忘れ外来での診察は、通常、非常に丁寧な問診から始まります。医師はまず、ご本人から現在の症状や困りごとについて話を聞きますが、それと同じくらい、あるいはそれ以上に重視されるのが、付き添いの家族からの情報です。本人が自覚していない生活上の変化や、以前と比べて変わった点などを具体的に伝えることが、正確な診断の鍵となります。問診の次に行われるのが、神経心理学検査です。これは、臨床心理士などの専門家が、質問や簡単な作業を通して記憶力、注意力、言語能力、判断力といった脳の様々な機能を客観的に評価するテストです。「長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」や「ミニメンタルステート検査(MMSE)」などが有名で、これにより認知機能が年齢相応のレベルにあるのか、どの領域に低下が見られるのかを数値で把握します。さらに、脳そのものの状態を確認するために、CTやMRI、SPECTといった画像検査が行われます。これにより、脳の萎縮の程度や血流の低下、他の脳疾患の有無などを視覚的に確認します。加えて、認知症と似た症状を引き起こす他の病気の可能性を排除するために、血液検査も欠かせません。これらの多岐にわたる検査結果を総合的に分析し、医師は最終的な診断を下します。単に病名を告げるだけでなく、その後の治療や生活上のアドバイス、利用できる介護サービスまで含めてサポートするのが、物忘れ外来の大きな役割なのです。

  • もしかして認知症?最初に訪れるべき診療科

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    大切な家族に「あれ?」と思う瞬間が増えてきたとき、多くの人が最初に直面する壁は、一体どの病院の何科に相談すればよいのかという問題です。認知症の初期症状は、単なる加齢による物忘れと見分けがつきにくく、また症状の現れ方も多様であるため、適切な診療科を選ぶのは決して簡単ではありません。一般的に、認知症の診断と治療を専門的に扱うのは、精神科、神経内科、老年科、そして「物忘れ外来」です。精神科は、認知症に伴う不安、うつ、幻覚、妄想、興奮といった行動・心理症状(BPSD)のケアに強みを持っています。心の専門家として、患者さん本人や家族の精神的な負担を軽減するアプローチを得意とします。一方、神経内科は、脳や神経の器質的な変化を診る専門家です。CTやMRIといった画像診断や神経学的な診察を通じて、アルツハイマー型認知症だけでなく、レビー小体型認知症や前頭側頭型認知症など、原因となる疾患を正確に鑑別診断することに長けています。また、老年科(老年内科)は、高齢者を総合的に診療する科です。認知症だけでなく、高齢者が抱えがちな複数の持病や、多くの薬を服用していることによる影響なども含めて、体全体の状態をトータルで診てくれるのが特徴です。そして近年増えているのが「物忘れ外来」です。これは認知症診断に特化した専門外来で、多くの場合、臨床心理士やソーシャルワーカーなど多職種の専門家がチームを組んで対応にあたります。どの科が最適か迷った場合は、まず最も気になる症状を基準に考えるとよいでしょう。物忘れが主なら物忘れ外来や神経内科、気分の落ち込みや不可解な言動が目立つなら精神科、というように判断するのも一つの方法です。

  • 婦人科も選択肢?更年期と自律神経の深い関係

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    40代半ばを過ぎた頃から、原因不明のほてりや発汗、気分の浮き沈み、そして不眠といった症状に悩まされる女性は少なくありません。これらの症状は、多くの人が「自律神経の乱れ」として片付けてしまいがちですが、実は女性ホルモンの減少が引き起こす更年期症状の典型例でもあります。女性の体は、卵巣から分泌されるエストロゲンというホルモンによって守られていますが、閉経前後の約10年間(更年期)にこのエストロゲンの分泌が急激に減少します。このエストロゲンは、脳の視床下部という場所でコントロールされていますが、実はこの視床下部は自律神経を司る中枢でもあるのです。そのため、エストロゲンが減少しホルモンバランスが乱れると、その影響がすぐ隣にある自律神経のコントロールセンターにも及び、結果として自律神経のバランスまで崩れてしまうのです。これが、更年期に動悸、めまい、頭痛、イライラ、不安感といった自律神経失調症と非常によく似た症状が現れるメカニズムです。もしあなたが40代以降の女性で、前述のような多岐にわたる不調を感じているのであれば、心療内科や内科だけでなく、婦人科を受診することも非常に有効な選択肢となります。婦人科では、血液検査でホルモン値を測定することで、自分の体が今どのような状態にあるのかを客観的に知ることができます。そして、症状が更年期によるものだと診断されれば、ホルモン補充療法(HRT)や漢方薬、プラセンタ治療など、婦人科ならではの専門的なアプローチで症状を和らげることが可能です。何科に行けばいいか迷った時は、自分の年齢や性別特有の体の変化にも目を向けてみることが、解決への近道となるかもしれません。

  • その症状は治る認知症かもしれないという希望

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    認知症と聞くと、誰もが進行性で根本的な治療法がない、不治の病というイメージを抱くかもしれません。しかし、認知症のような症状を引き起こす病気の中には、原因となっている疾患を治療することで、劇的に症状が改善したり、完治したりするケースが存在します。これらは俗に「治る認知症」と呼ばれており、この可能性を見逃さないためにも、早期の正確な鑑別診断が極めて重要になります。代表的な「治る認知症」の一つが、「正常圧水頭症」です。これは、脳の周りを満たしている脳脊髄液の流れが滞り、脳室に過剰に溜まることで脳を圧迫する病気です。物忘れなどの認知機能低下に加え、「歩幅が狭く、足が上がらない」といった歩行障害や、尿失禁を伴うのが特徴で、脳内に溜まった髄液をチューブで腹部などに逃がすシャント手術を行うことで、症状の劇的な改善が期待できます。また、「慢性硬膜下血腫」も原因の一つです。頭を軽くぶつけたことなどがきっかけで、脳の表面にじわじわと血液が溜まり、数週間から数ヶ月かけて脳を圧迫します。これもCTやMRI検査で容易に診断でき、手術で血腫を取り除けば、認知機能は回復します。その他にも、体の新陳代謝を司る甲状腺ホルモンの分泌が低下する「甲状腺機能低下症」や、ビタミンB1、B12、葉酸などの欠乏症も、無気力や物忘れといった認知症そっくりの症状を引き起こしますが、これらは血液検査で診断でき、ホルモン剤やビタミンの補充で治療可能です。うつ病も、高齢者の場合は「仮性認知症」と呼ばれるほど認知機能の低下を伴うことがあります。これらの可能性を一つひとつ丁寧に除外していくためにも、物忘れに気づいたら自己判断せず、適切な医療機関で総合的な検査を受けることが何よりも大切なのです。